ヨハンとの共同生活を始めて二日目を迎えた。
昨日はユベルがずっと傍にいて、ヨハンにラブソフトの一件を聞き出せなかった。
どうやってヨハンはオレを助けてくれたんだろう・・・?
そして・・・何故ヨハンはあの時ラブソフトにいたんだろうか・・・?
三人で食べる二度目の夕食は複雑な気持ちのまま、オレは無言で口に運んでいた。
「ねえ・・・十代!」
んん!?
「えっ、あ、何?ユベル」
「もう、せっかくこのボクが一生懸命料理したのに十代ってば、全然美味しいって言ってくれないんだから。・・・美味しくないの?」
迂闊だった・・・。
ユベルが居るというのにラブソフトの事ばかり考えていた。
「美味い!美味いって、ユベル。十代だってそう思うよな、な?」
「ヨハンには聞いてないんだよ・・・。ボクは十代に聞いてるの!」
「あぁ・・・そう、そうだよな・・・」
食欲がある訳じゃないので機械的に口に運んでいたが、お世辞にも美味いとは言えない。
不格好に刻まれた野菜と生焼けの高級牛肉・・・やたらと塗りたくられた一流専門店のソース・・・。
ヨハンが心配そうにオレを見つめている。
・・・。
「ごめんな、ユベル。オレ、腹減ってたからガツガツしちゃってさ・・・。うん!すっげー美味いぜ!」
ホッとした表情を見せるヨハン。
これが幸せの味・・・なんだろう・・・な。
「やったね!ねぇ、十代。ボク、(キミの)良いお婿さんになれるかな?」
「なれる、なれる!きっと(十代以外の)良いお婿さんになれるさ」
「だから、ヨハンには聞いてない・・・・。ボクは十代に聞いてるの!」
「あぁ・・・そう、そうだよな・・・」
・・・。
「うん・・・。ユベルはきっと、素敵なお婿さんになれると思う」
「フフ、嬉しいなぁ。ねえ、十代・・・結婚式じゃ絶対純白のドレス着るんだよ?いくらキミが嫌がろうともそれだけは譲れないからね」
「お、おう・・・?」
無邪気?に喜ぶユベルは将来の結婚式についての夢を話し出す。
嬉しそうなユベルの笑顔が・・・ヨハンの笑顔が・・・今のオレには重く圧し掛かる。
ラブソフトの一件をヨハンに聞けずに三日目を迎えてしまった。
いつものようにキッチンでユベルが食事の支度をしてくれているのを見計らい、オレはヨハンに確認してみようと思った。
リビングのソファーで寛いでいるヨハンにユベルに気付かれないよう、そっと歩み寄る。
「ヨハン・・・ちょっと聞きたい事があるんだけど?」
「ん?どうしたんだよ・・・怖い顔して・・・」
あの夜の一件を確認しようと思っていたのに、いざ聞こうと行動に移せば、ためらってしまう。
聞いてしまうと、何かが崩れてしまうようで・・・怖い。
少しずつ、この共同生活に慣れつつある自分に、全てを捨てた筈のこのオレに守りたい何かが・・・失いたくない何かが芽生え始めている。
「どうした・・・。何、十代?」
あの日の事を確認する
確認するのをやめる